台湾に住む

2007年07月13日

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1.中国語(北京語)学習と中華民国・台湾 


■使っている漢字の字体は繁体字 
 日本人にとって台湾を留学先に選ぶ場合、目的にもよりますが、一番一般的だと思われる中国語(北京語)学習を例にとって簡単に事情を紹介してみましょう。
 まず、同じ漢字圏といっても使っている字体は日本・大陸・台湾の間では共通した字はあるものの、かなり違います。まず、大陸は簡体字といわれる字体を使っていて、国民党との内戦に勝利した中国共産党政権下で1950年以降に作られたかなり簡略化された字体を使っていますが、台湾では戦前の日本が使っていたような旧体字をそのまま使っています(日本の旧字と完全に同じかどうかは確かめていませんが)。これは繁体字とも言われますが、これが実は一番伝統的な漢字の正字体で、現在、私たち日本人が使っているのは、日本式略字体で大陸ほどではないにしろ簡略字体であることを思い出さなくてはなりません。 香港で使われている、あるいは、東南アジアの華僑の間で使われているのも、やはり繁体字です。
 とにかく台湾では日本で普通に中国語の漢字だと思われている簡体字は全く使いません。また、コンピュータの文字コードも全く違う体系で、大陸はGB、台湾はBIG5というコードを使っています。メールの入力でもコードを相手に合わせて変換しないと、当然全く通用しません。勿論、いくら漢字を並べてメールをしても、日本のJISコードでは両国には全く読めません。 なお、Windows2000以前の文字コード互換性にかんする問題については新潟大学中国思想研究室の以下のページなどを参照ください。(http://hyena.human.niigata-u.ac.jp/files/clk2-4.html)
 ただ、現在では、コンピュータ上での文字コードの扱いは、ユニコードの使用で、日用的な面では、大変便利になりました。Windows2000やXPなら、文字コード表を切り換えるだけで、中国語のソフトでも日本語のソフトでも、一つのOS上で、問題なく動きます。また、漢字などの入力もワープロソフトやメールソフトでフォントやコードセットの切り替えをしておけば、日本語入力でそのまま繁体字の文面をBIG5コードで入力できます。インターネットの検索でも同様で、GOOGLEの検索欄に日本語の入力ソフトで「台湾滯在」のように入力すると、日本のサイトばかりではなく台湾のサイトも検索してくれます。( もちろん専門的な文字コードの問題については、字体、異体字など、いろいろな問題があり、安易にWindows2000やXPを使っていればいいというわけではありませんので、データベース作成やソフト製作などの技術レベルでは慎重に対応する必要があります)

■台湾式ピンインは「ボポモフォ」
 次に、日本の大学では、中国大陸で一般的なローマ字式ピンインを使って中国語(北京語)の発音を教えるのが普通ですが、台湾では普通には「ボポモフォ」といわれる独自の表音文字を使います。日本の「あいうえお」と同じような はたらきをするものです が、北京語の子音と母音を音節で区切って表記している記号で、小学生は北京語の読み書きを習うとき、最初にこの記号の読み方を練習してから、漢字で表記された文章を読んでいきます。これに慣れれば、実際には三種類ぐらいあって統一されているとはいえないローマ字式ピンインより覚えやすいかもしれませんが、日本で少し中国語を習ったことのある人は、また別の文字を覚えなくてはいけないのかという抵抗感があるようです。
 しかし、これにはいろいろな利点があるのです。まず、これが読めれば利用できる図書が飛躍的に増えます。台湾で出ている辞典にはこの表音文字で発音が付けてありますし、外国人用の教科書も全部発音は表音文字で著されています。台湾の子供たちは、幼稚園でこの表音文字を習い、漢字の北京語読みを覚えていくのですが、子供向けの本には勿論この表音文字で発音がちょうど日本で振り仮名をするように全て付けてありますし、受験勉強の国語の教科書では古典の漢字音を示すのにやはりこの表音文字を使っています。一度読めるようになると、実は台湾で出ている多くの学習用の中国語文献が自由に読めるようになるのです。一定レベルに達した方には非常に便利なものだと思います。そして、 コンピューターの場合も、マイクロソフト社のWindows2000やXPなどを使う場合、漢字入力には繁体字入力で、この表音文字がそのまま使えます。勿論、ローマ字式入力が出来るソフトもあるのですが、一度覚えてしまえばこの「ボポモフォ」は日本の仮名と同じように便利なものだということが解っていただけると思います(ただし、日本の仮名とは違って、韓国語のような子音記号と母音記号を組み合わせて表記する方式です)。 韓国語が今、日本でブームになっているそうですが、その際、韓国の情報を入手するのに、ハングルを入力する必要があり、ハングルの記号を日本語キーボードの対応するキーに、シールで張り付けて使っている人が多いと聞きましたが、同じように、「ボポモフォ」の記号を日本語キーボードにシールで張り付け て使うことも可能です。

■台湾で使われている「国語」と台湾語・客家語・諸原住民語
 最後に、日本人が普通、中国語だと思っているのは実は中国の北部・北京を中心とする地方の方言である北京語です。これは日本の標準語・共通語と同じ扱いをされて、台湾でも学校で「国語」として教えられています。しかし、テープを聴くと同じ「国語」といっても、大陸の発音は「R」の音 や全体的にかなり摩擦音が目立ちますが、台湾ではほとんど入れません。同じ北京語と言っても、地方により發音の仕方はずいぶん違うのです。その他、言い方としてどちらかでしか使わないもの、同じ単語でも意味が違うもの、地域が変わったら使ってはいけないものなど、違いがいろいろあるようです。いわゆる中国語として日本人が思っている共通語である北京語自体についても、大陸と台湾とでは微妙な違いがあるのです。
 そして、同じ中国文化圏と言っても南方の台湾と北方の北京では、日常使う言葉は全く違っています。台湾には、福建省南部から広東省の一部で使われているのと同系統のビンナン語 (台湾語)と言われる、台湾語を話す台湾人と、広東地方の一部分で使われているのと同系統の客人語を話す客家人がおり、原住民の人たちにもそれぞれお互いに共通性のない各部族の言葉があって、面積は九州と同じぐらいですが台湾も 典型的な多言語国家です。台湾南部では生活にはほとんど台湾語が使われていて、国語である北京語はあまり耳にしません。しかし、北部の台北では国語の北京語が共通語のように日常も使われています。とにかく、中国語とは言っても方言の違う人には自分の方言を話しても ほとんど通じません。 家内がテレビで、大陸の方言を聞いて、「**の言葉らしいが、何を云っているのか分からない」というのをときどき聞きますが、こうした事情は日本の方言でも同じであり、そうした点で、言語に対する纎細さは、海外に滯在する場合、最も求められる感性の一つだと思われます。中国語の場合も、共通語としての北京語がいわゆる中国語になっているのもそこに理由がありますが、しかし、本当にその地域で商売などをするにはその地域の方言を大切にする必要があるでしょう。 安易に、大陸の北京で話されている言葉と話し方が正しい中国語なのだというように短絡しないでいただきたいものです。これは、東京言葉が正しい日本語であり正しい話し方だと言っているのと同じで、こうした考え方は、方言を生活言語にしている人達には、言語による暴力 的支配以外の何ものでもありません。
 以上、言語の基本的な状況について、大陸と台湾とではいくつか重要な違いがあることをまず、理解していただきたいと思います。

  

2・留学環境と手続きの進め方


■台湾での留学先は?
 私の知っている範囲では、外国人が中国語学習を目的に台湾に留学しようとする場合は、各大学や高等専門学校などが開設している中国語 (北京語)学校にまず入るのが普通です。うわさでよく聞くのは国立師範大学の中国語学校で、ここを卒業して中国語人材に育った日本人も多く、入学者の評判がいいようですが、その他にも、各地の学校で開設されていますので、詳しい情報については、以下のホームページを参考にして、各大学のホームページ をみてください。大学宛には簡単な英語でメールで の問い合わせもできるはずです。

「海外移住情報」
(各地域への居住方法の紹介。アジアの部に「台湾」がある。)
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/taiwan.html
 中華民国教育部
(日本で言えば文部省にあたる中華民国・台湾の教育行政府。 トップページの「網站導覽」を押しメニューページに入ると左側メニューの「各級學校」があるので、その中から「大学校院」を選ぶ。学校に関するリンクなどから、たどっていくと各種の学校が見つけられる 。)

 日本語では「オールアバウトJapan」に台湾留学の紹介があります。有名な語学学校の紹介やビザの手続きもでている ので、台湾への留学を具体的に考えている人には、参考になるでしょう。(http://allabout.co.jp/travel/traveltaiwan/closeup/CU20011029A/index-daxue.htm) 

■中国語学校のカリキュラム 
 台北にある中国語学校は、日本人専用の教科書を用意している学校もあり、コースや期間もいろいろ選べるようなので、自分の目的に応じて勉強が可能です
夏休みを利用した短期集中研修も出来るようです。授業の方式としては、日本語の解る講師が翻訳法で解説してくれる場合と直接法によって中国語だけで授業を進める場合もあります。自分の目的と言語能力に応じてどの形態がいいか学校に確かめてみる必要もあるでしょう。
 これらの中国語学校は日本の英語学校のような営利事業である塾経営方式ではなく、公教育機関である各大学、高等専門学校が開設しているものが中心ですから、その点では欧米の大学が開いている各国語学校に行くのと同じような形です。留学対象の信用度としては悪くないと思います。
 これらの学校に在学している学生には、留学生ビザが発行されますから、滞在資格としても安心でしょう。
 
■台湾の居住環境
 また、生活環境の点でも台湾は日本人には過ごしやすいと思われます。台北などの大都市の環境と生活レベルは日本の都市とほぼ同じで、基本的な生活の利便性は全く変わりありません。交通関係は日本より規制が緩いので、交通事故には十分注意する必要がありますが、その他の点では東京の繁華街と同じようなもので、大都市で生活する際の注意を守っていれば、生活には何の不便も不安もありません。生活費としては、台北市内を例に取れば、部屋代は日本の東京とほぼ同じレベルでこれが大変ですが、その他の食費、交通費、日用品、娯楽費などはほぼ全て日本の半額以下で済みます。特に食文化の国ですから食べるものは何でも豊富に安く手に入ります。活気あふれる街頭の人混みになれてしまえば、こんなに多様性に富んだ活力のある国なのかと、短期間滞在するだけでも「台湾の奇跡」が実感できると思います。
 具体的な留学の手続きは、次のページに詳しく紹介されていますので、留学をお考えの方は是非ご覧ください。

 中華民国・台湾ホームページ
(中華民国・台湾の日本駐在事務所による公式ホームページ。各種紹介を始め詳しい留学手続き案内もある 。メニュー左側の「中華民国の手引き」中の「査證」、「留学」を参照。http://www.roc-taiwan.or.jp/study/index.html。)

 同志社大学の名和研究室:台湾留学ガイド(http://www1.doshisha.ac.jp/~mnawa/)
中国大陸と台湾への留学案内と体験記がある。実際に留学した経験から説明されているので、具体的で分かりやすい。中国関係のホームページを見るための情報も詳しい。
 

3・いかに仕事を見つけるか:台湾の日本語教師募集と応募

 
 以下では、台湾で仕事を見つける具体的な方法として、「日本語教師」の募集を見てみます。もちろん職種により状況も就職環境もまったく違いますから、そのほかの場合は、インターネットで台湾関係の掲示板を探してみてください。

■台湾の日本語教育環境十年史
 台湾で比較的就職が多かった仕事としては、「日本語教師」があります。以下、それについて概要をお知らせしましょう。
 私が台湾へ来た1994年ごろ、台湾へ専門的な日本語や日本文学専攻の日本人が日本語教師として就職する例はまだ少数でした。その当時、台湾で日本語を教えていた方々は日本語教育のパイオニア世代であり、結婚や留学を機会に台湾へ定住した会社員やマスコミ関係者、歴史や政治、文化人類学関係の研究者で、試行錯誤で日本語を教えながら次第に日本語教育の土壌を作っていかれた方々です。
 日本へ留学して台湾へ帰国し就職する台湾人留学生の方々の場合も、日本語や日本文学で博士号を持っている人はまだ数える程で、大半は修士のままで、大学へ就職していました。その他、専攻が法学、工学、農学、経済などの博士で日本語とは関係のない分野の人も日本語学科の主任になったりして、専門的人材はまだ少数でした。
 この当時は、台北の大学で日本語学科があったのは、東呉、輔仁、淡江、文化の私立四大学だけで、中南部では、まだ、一二校程度でした。大学と言っても研究より、日本語を教えることが中心で、やっと、学会が発足したばかりの状態でした。この時代は、就職も比較的楽で、ずいぶんのんびりした時代でした。
 しかし、その後、一種の日本ブームが起こり、台湾での日本語ブームが始まって状況が変わりました。

■現在、日本語教育を取り巻く環境の変化
 2004年現在、台湾の大学で日本語学科を持っている大学は、国立大学も含めて40校を超え、10年前の数倍になりました。 当然、教員数も増加し、たとえば私の勤める学校の日本人教官は二人から七人に増えました。また、アメリカの大学教育改革にならった改革が台湾でも始まり、新規の就職は、日本人でも台湾人でも博士号保持者でなければほとんど不可能になっています。契約は1年または2年で、年度ごとに教育、研究、校務サービスの三点から評価されて、昇給や解雇が決定される大学も多くなりました。日本の予備校と同じように学生による支持度調査も毎学期行なわれますので、支持度が低い教官は昇給停止、解雇になります。
 日本人教官も随分増えて、日本やアメリカで課程博士を取得した新任の日本人教官がこの五年で倍以上に増えています。台湾人教官も新規の就職はすべて博士号保持者で教育経験がある者という厳しい条件が付けられています。
 しかし、学科数が増えたために、各大学の日本語学科の経営は却って難しく、学生募集で定員割れを起こす大学や、低学力の学生を入れているために日本と同じように正常な授業ができない大学も増えています。また、日本の経済的衰退と中国大陸の発展のために、第二外国語や高校での第二外国語としての日本語の需要は急速に衰えつつあり、10年前30クラス近くあった勤務先の大学の第二外国語日本語クラスは、今、10クラスを切りました。
 こうした状況から、台湾での日本語教育の就職は、2000年頃をピークに、次第に、難しいものとなり、また、就職できたとしても、いつまで勤められるかわからないという不安定さをともなう状況になっています。ですから、現在では、以前のように手放しで台湾への就職をお勧めすることはできません。

■台湾で求められる日本語教師の技量 
 台湾の大学では、台湾人教官が「読解」「文法」「文化」「歴史」など知的理解を重視する科目を担当し、日本人教官が「会話」「作文」の言語技能重視の科目を担当するのが一般的です。大学院では、日本と同じように専門科目を開設しますが、院生の日本語での理解力は限定されるので、台湾国語(北京語)の能力は高い方が望ましいと言えます。
 また、授業では必ずしも台湾国語は必要とは言えませんが、学生との日常的なコミュニケーションでは不可欠で、大学でもクラス担任制があり、生活全体の責任を負う場合があるため、台湾国語を身につける必要があります。
 もう一つ重要なのは、研究能力と教育能力です。勤務先の大学では、過去三年の勤務状態について「研究」「教育」「服務」という三分野でそれぞれ点数が決められ、各80点以上が必要とされ、それが充たされた上で、なおかつ昇格論文を外部審査に出し、合格しなければ、昇格できません。特に大事なのは研究業績で、発表先と論文数でこまかく審査の基準が決まっています。もう年功によって昇格できる時代は完全に終わりましたので、毎年研究業績を出すことは、大学の教官にとって地位を安定させるために必須の条件です。と同時に、授業でも学生から高い評価を得る必要があります。毎学期、担当科目について学生アンケートがあり、点数が出されます。極端に低い点数は、招聘の継続に関わりますし、昇格するには、一定以上の点数が必須です。

■採用試験は?
 大学の場合の採用条件は、2004年現在でだいたい以下のようになるでしょう(国立高雄第一科技大学の2004年の例。他の大学でもだいたい採用条件は同じです)。
○博士学位または台湾での助理教授資格(博士号取得者の講師に相当します)
○専門:日本語学、教育、文学関係
○主要論文業績
 定員が充たされるまで各年度に募集が行なわれますが、書類審査および授業実技が就職試験として行なわれる場合が多いです。 台湾は二学期制で、秋が新学期なので、8月1日が新年度開始の日です。採用は前年度の第一学期の後半から第二学期の始めに(日本の秋から冬にかけて)行なわれることが多く、途中採用は、 まずありません。各大学のホームページで、募集の広告をみてください。

■日本語塾への就職
 一方、もう一つの就職先としては、日本語塾があります。大手では、「地球村」などの外国語塾がありますが、小規模な学校は、多数あるようです。資格はまったく必要ありませんが、学生はお金を払って来ているため、要求が高く、また、おもしろくなければすぐに辞めてしまうため、日本の予備校と同様、学生の定着度がそのまま教師の評価に直結しますから、かなり厳しい評価にさらされるのを覚悟する必要があります。また、台湾での雇用契約は半年や一年更新が普通で、日本で言う「社会保障」は「健康保険(全民健保)」以外には、まずありませんので、自力で生活を守る工夫が必要です。
 大学や塾の日本語教師募集を探すには、GOOGLEの検索ページや各大学のホームページで「誠徴」「專任教師」などをキーワードに見てください。また、塾の関係は、台湾の人材バンク(人力銀行)に募集があります(GOOGLEの検索ページで「人力銀行」をキーワードに入れてください;104人力銀行http://www.104.com.tw/、1111人力銀行http://www.1111.com.tw/など多数あります)。「教育學術」をキーワードに見ていけば、募集が見つかります。紹介料は取られますが、最初に就職を見つけるには便利でしょう。
 台湾にある人材バンクの中で、最近見つけたのは日本系の人材バンクです。
「パソナ・台湾」
http://www.pasona.com.tw/j-person/index.asp
紹介は無料とホームページには書いてあります。日本語・英語と中国語のバイリンガルの能力がある人は、一般企業でも需要が多いはずです。台湾留学などでキャリアを磨いて、挑戦してみてください。

■日本語教師になるには?
 日本語教師を目指している皆さんは、まず、日本語教師にはどんな能力が必要なのか、日本のホームページでよく確認して見てください。例えば、日本語教師関係の雑誌を出している「アルク(http://www.alc.co.jp/jpn/teacher/nyumon/)」や
 日本語教師フォーラム(http://www.nihonmura.info/)
などのページをご参照ください。
 就職先と必要な学歴、資格(日本語教師能力試験)などの紹介があります。台湾では、大學の場合は、学歴が最も重要な資格で、先に述べたように常勤教官の場合は、ほぼ必ず博士号(日本語学、文学、教育関係がメイン)が必要になっています。非常勤でも、必ず修士号が必要です。日本語教師能力試験は、日本国内でしか通用しませんので、海外では、資格としては無意味です。10年前とは異なり、日本語教育も專門化が進んでおり、台湾や韓国など先進国地域では、必要な学歴を取得することが、既に前提になっています。台湾で海外生活を目指す方は、日本での進路と学歴取得をまずお考えになるべきでしょう。
 一方、学歴については、台湾の大学院で取得するという方法もあります。修士については、台湾の国立、私立の大学院で取得できますので、留学して修士号を取得し、非常勤で勤めながら、キャリアを付けていくという道も考えられます。
 ただ、以前のように日本語教師が足りなくて困っている時代は既に過去のものとなり、学生數の減少で台湾での日本語学科や日本語塾の経営もかなり圧迫されていますので、より高い学歴と能力、技能が総合的に求められていることを忘れないようにして頂きたいと存じます。

4・台湾での就業やその他の滞在

■台湾での就業の手続き
 日本語教師以外の仕事について、実は、 具体的な就職活動や、台湾での外国人の起業については、あまりよく知りません。
 私の場合の経験を以下に書いておきます。

①就職先の大学での面接
②就職の準備
 就職先の大学は、招聘状を出し、所轄の官庁に許可を求める。所轄の官庁は、台湾での労働を招聘状の機関で、契約の期間認める許可証を出す)
③労働ビザの申請
 招聘状と所轄官庁の許可証を持って、日本にある台湾の外交機関『亞東関係協会』で、労働ビザを申請する。さらに、公立病院作成の健康診断書が必要。
④外事警察へ出頭
 入国したら居住地の「外事警察」へ出頭し、「外国人居留証」を申請してください(パスポート、2×2の写真4枚、招聘状、許可証)。居留証が台湾でのIDカードになりますので、大事に携帯してください。また、居留証にはFで始まる統一番号が付けられますが、これが、その人の台湾でのID番号です。また、外事警察で、海外へ出かけて台湾へ再度入国するときに使う「重入境許可証」を申請して、パスポートに張ってもらう必要があります。
⑤勤務先での準備
 最後に、勤務先で納税の届けをし、教育者資格の認定を受けます。納税には、納税者番号が付けられ、外国人の場合は、生年月日+名前の最初のアルファベット二文字になります。また、教育者資格は、学位記、学位論文、卒業證明書、パスポートなどを勤務先の学校を通して、教育部に審査に出し、講師、助理教授、副教授などの資格を認定してもらうもので、認定されると各職階の証書がもらえます(日本の教員免許状に相当します)。
 
■台湾で就職するにはどうすればいいのか?
 台湾へ留学した経験もないようなとき、具体的にどうするということは実際に就業、留学、滞在なさった方のアドバイスを受けるのが一番です。
 幸いインターネットでこうした経験を交換することが簡単にできるようになりましたから、そうしたサイトを是非、ご覧ください。
 GOOGLEで「台湾での就業」「台湾での留学」などのキーワードを入れれば、随分、たくさんのヒットがあります。
 一つご紹介すると、

まるごと台湾(http://www.marugoto-world.com/taiwan.html)中の「台湾留学の掲示板」
http://www.marugoto-world.com/bbs2/ryugaku-c/joyful.cgi?page=0
「台湾共有掲示板」
http://www.taiwan-link.com/bbs/kyoyuu/
 活発に具体的な留学や滞在の経験が交換されています。情報も新しいので様子を知るのにいいでしょう。
 なお、2004年現在の一般的な就業資格としては、以下のとおりです。

1博士課程終了者:中華民国労働ビザ申請の資格を有す
2修士課程修了者:中華民国において1年以上の、労働ビザの発行を受けようとする企業での業務内容に関わる業務経験を持つ者
3学士課程修了者:中華民国において2年以上の、労働ビザの発行を受けようとする企業での業務内容に関わる業務経験を持つ者
尚、上記業務経験の期間は正式な中華民国政府の労働ビザを所有しての勤務期間とする。
 

 関係する法令は毎年改定されていますので、最新の情報は、
勞働委員會「外國專業人士工作許可専區」http://www.evta.gov.tw/foreign/foreign.htm
をご覧ください。 直接、外国人の労働に関係する法律は「就業服務法」で、特に第46条「外国人の労働を以下に制限する」、第51条「第46条などの制限を受けない外国人の労働」などです。
 一般的には、第46条で、ここには、建築・土木技術者から製造業まで、どのような専門技能の持ち主が滞在できるか詳しい案内が出ています。
 台湾で言う専門技能には、定義があります。現在の細則では以下のような仕事です。
 1.専門性あるいは技術性の高い職種
 2.華僑あるいは外国人で政府が許可した投資や事業の管理者
 3.学校の外国籍教師
 4.短期予備校や外国語学校の専任外国人教師
 5.スポーツのコーチや選手
 6.宗教、芸術および芸能関係の職業
 7.商船、作業船およびその他交通部が特に許可した船舶の船員
 規定の1にある「専門性あるいは技術性の高い職種」は現在、以下のように、定義されています。
 (一)建築および土木技術のエンジニア
 (二)交通事業の職業
 (三)財政金融サービスの職業
 (四)不動産取り引きに関する職業
 (五)移民サービスの職業
 (六)弁護士
 (七)エンジニア
 (八)医療保健関係の職業
 (九)環境保護に関する職業
 (十)文化、運動および余暇レクリエーションサービスに関する職業
 (十一)学術研究
 (十二)獣医師
 (十三)製造業に関する職業
 (十四)その他、所轄の機関が指定する職業

 大事なことは、一般的には、「専門的な技能を有する」ということが台湾での外国人就労者の基本的条件だということです。台湾はアメリカ式の競争社会なので、つねに能力を上げていかないと、昇給もありませんし、解雇されても文句は言えない厳しさがあります。しかし、技能さえあれば、たとえば、 私のように業績のない研究者だった人や、日本では競争が激しくて売れないタレントや漫画家のような人でも、こちらでチャンスをつかむことは可能です。技能+外国人という条件が有利にはたらくことが多いからです。しかし、 自分の就職したい技能面で一定レベルを逹成していることは必要不可欠の条件です。日本の大学に入れないからとか、日本で就職が見つからないからということで、台湾で大学入学、就職するというのは、確かに努力次第で はありますが、国語(北京語)や台湾語ができないぶん日本にいる以上に困難であり、台湾でもフリーターになってしまう可能性が大きいでしょう。安定した滞在の基本条件は学歴も含めた「技能」であることを、お考えください。台湾のキャリア社会では、常により高い学歴と能力、技能が総合的に求められていることを忘れないようにして頂きたいと存じます。

5・台湾に配偶者がいる場合

■特例的な場合
 「就業服務法」第51条により、台湾人が配偶者である外国人には、申請すれば労働許可が下りるようになりました。これは、男性でも女性でも可能です。
 その他、永住許可をもらった人などにも、労働許可が下ります。
http://www.evta.gov.tw/foreign/foreign.htmで、労働許可証の申請の方法をご覧ください。


 

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上次更新此站台的日期: 2007年07月13日